偶然、目に入っただけだった…
□ステンドグラス□
上を見上げて微笑む少女。
彼女は確か…クラスメイトだったはずだ。
話したこともなければ、席が近くになったことすらない、本当にただのクラスメイト。
けれど、とても彼女が気になった。
今、はじめて彼女の存在に気を止めたばかりなのに、何故か彼女が何にその微笑みを向けてるのか気になった。
何故かの答えは付けられなくもない。
そこには木しかない。
大きくも小さくもない、よく学校に生えている平凡な木。
その木を見上げている彼女はとても嬉しそうだった、幸せそうだった。
鳥の巣でもあるのだろうか。
何故か人なら誰かが一点を見つめ微笑んでいれば気になるものだ。
しかし、気になっている理由はそんなことじゃない。
自分が気になる理由、それは少女の表情にあった。
少女の微笑みはどこか神秘的で、慈しむような笑みであった。
どこか、声の掛けずらい微笑み。
アルカイックスマイルというものを美術の時間習ったのを思い出す。
こういう笑顔をアルカイックスマイルと呼ぶんだと自分は思った。
ふと、少女と目が合う。
どうやらこちらの視線に気付いたらしい。
そりゃそうだ。
穴が開いてしまいそうなほどに、自分は彼女を見つめていたのだから。
急いでそらすと今度は彼女がこちらを見つめる。
このまま帰るのも気まずく会釈をし去ろうとすると彼女は手招きをしながら一言。
「来て」
さっきの微笑とは違い、人懐っこそうな笑みで呼ぶ。
ただのクラスメイトに簡単に声を掛けれる彼女を心底尊敬しながら自分は彼女に言われるまま彼女のいるところまで行った。
「どうしたの?」
戸惑いながら彼女に聞く。
彼女はそっと上を見上げる。
なんとなく固まってしまった。
上を見るべきなのだろうがタイミングを逃してしまった。
彼女の顔をじっと見る形になってしまった。
近くで見るとそれは微笑みではなくどこかを懐かしんでいるような、痛んでいるような顔であった。
彼女の顔を見、上を見なければと余計に思ったが今から見上げると白々しい気もする。
空々しいような、場違いなような気さえするのだ。
彼女はそれに気付いたのか、程よい間合いをとって言う。
懐かしんでいるような声で。
「見て」
やっとのことで上を見上げる。
そこに何があるのか、気になって仕方がなかった。
そこに何があるかやっとわかる。
期待とともに上を見上げた。
けれどそこには何もなかった。
「?木がどうしたの?」
彼女の意図するものがわからなくて聞く。
聞くと彼女は少ししゅんとして、その後は困った顔になった。
独り言のようにあなたならわかるかもって思ったんだけれどもな、と呟く。
それは非難めいたものはなく、本当にただわかってくれると期待したが駄目だったことを悲しんでいるだけだとわかった。
多分この独り言も口に出しているつもりはないのだろう…
だからこそ、自分はとても自分を悔しく思った。
彼女が見ている何かを気付けない自分がとても悲しく思った。
「ステンドグラスみたいじゃない…」
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06.06.24