静かに何かが落ちる感覚がした。
たまたま、目に入ったもの。
あれは間違いなくあの人がとても大切にしていたものだった。
見て、触れて、確かめて、やはりそうだと思った。
間違いなく、だと思ったのにわざわざ確かめてしまった自分に少し笑ってしまう。
いや、懐かしさのあまり手にとってしまっただけかもしれない。
また、ぽとんと何かが落ちた。
それは心地いいのにどこか少し痛かった。
自分の真ん中にしずくのようなものが落ちてた。
落ちた場所は揺れているような気がした。
会いたい。
ずっと思っていた。
けれども、口実がなかった。
鋭い彼女には何の口実もなく会いに行くと気付かれてしまうことがわかっていたから。
いや、これは言い訳だ。
自分も口が立つ。
言い訳なんて簡単に思いつく。
会いに行くにはあまりに長い年月が経っている気がした。
いや、経っていた。
会いにいくことはできない。
でも、手紙くらいだそうか。
でも、きっともう恋人がいるだろうから、迷惑だろう。
でも、友人としてなら…いや、
でも、きっともう自分なんて忘れられているだろう。
行くとしても…でも、今日はもう遅い。
でも、をなんども繰り返す。
繰り返す「でも」。
でも、最後のでもは…
でも、この忘れ物が背中を押す。
だから、会いに行こう。
ぽとんとしずくのようなものが落ちた。
でも、もう、痛みはなかった。
本当はタイトルなし。
BACK
07.02.16