頭の中が真っ白になっていた。
半無意識に顔を上げると一哉の真剣な顔がある。
固まっていると、もう一度同じ言葉が繰り返された。


「どうしてだ?」


先程よりずっと優しく言われる。
けれど、決して空気は変わらなくて、泣くことさえ、息をすることさえ許されそうもない空気。


「…夏実に聞いてるんじゃ「聞いていない」


全て言い終わる前にぴしゃりと言われる。


「一哉君は…夏実に聞いて来たんじゃないの?」


口をついて出た言葉はもう、答えられた質問だった。


「岡崎さんに会ったなんて言ってないだろ」


確かに、そんなことは言っていなかった。
なら、ラ・プリンスの誰かに聞いたのかと思ってむぎは彼らが自分を心配して一哉をよこしたのではないかと訊ねたが、それも違うと言われた。


「ならどうしてここに来たの?」


単純に疑問に思った。
だから口に出してみただけなのに、場の雰囲気がまた、一転していた。


一哉の目が細められてむぎを見つめている。
その目は何かを推し量っているようで、むぎには痛くて重かった。
けれども、むぎは動くことはおろか目をそらすことさえも何故かできなかった。
一哉の目がふと緩むそのとき、何もそこから一哉の気持ちなど読めはしなかったのすごく一哉に悪いことをしている気がした。


「もう、言っただろ」


「…え?」


一哉は白いカップを持ち上げて笑った。
動作の一つ一つが流れるようで、それに目を奪われる自分にむぎは気付いた。
やっぱり改めてみると一哉は格好いいと思う。
容姿はもちろん行動力はあり、傲慢に見えてその実、優しい人間だとも。
学園で騒いでいる女子たちの気が知れないと思ったこともあったが、もしかしたら彼女らはものすごく人を見る目があるのかもしれないとむぎは思った。


「まだわからないのか?」


一瞬何のことだかわからなかったが、一哉が何故来たのかその答えを聞いていたのを思い出す。
もう既に答えたと一哉は言っていたが…
ふと一哉を見る。
あ…


「珈琲!」


正解と一哉は笑った。
それは嘘だと知っていたがむぎはもう、何も言うまいと思った。
一哉の優しさに甘えていると気付きながらも。






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逃げている自分を包み込んでくれる優しさに甘えてしまう。
『どうして病気に?』から話が逸れた…つか、一哉むぎっぽい…;のが一番問題かも



07.07.16