長く一緒にいればいるほど降り積もる雪のように。




□ 軌跡 □





むぎはよく、夜眠れないことがあった。
失う恐怖にただ一人ひざを抱え、震えながら朝を待つことなど日常茶飯事だった。


今は、それがない。
いつも隣にいてくれる、そして自分からも隣にいたいと思える人に出会えたから。
それは奇跡であると思う。
自分を眠れなくした事件…そのおかげで、出会えたのだ。
絶対に関わりあうことのなかったはずの二人を。


はじめから、敵であるとわかっていたにも関わらず、どこか惹かれていた。
でも、ただ、心の中に灯るものに長く気付かない振りをしたのだ。
けれども、惹かれたのは、自分だけでなく、"二人"で惹かれあっていたのだ。


どこか、互いに惹かれた。
今思うと…互いに、同じ寂しさを持っていたからかもしれない。


反対に寂しさが増えてしまった事もあったけれど、今は…






そっと目線を横に移せばそこには愛しい人がいる。
彼お気に入りのソファーでスーツのまま寝ている。
ぐっすり、仕事疲れか寝ている葵。
そんな彼のホクロに口づけを落とした。


寒いと思い、外を見るともう、春も近いのに雪がちらついていた。
きっと今年最後の雪だろう。


「幸せ、が降り止みませんね」


毛布をかけながら、そっと口にしてみる。


「まるで雪のように」


しかし、もうすぐ春がくる。
雪も溶ける。
涙も、心も、解けきって、これが幸せだと言える。
これを奇跡と言わずして、何と言おう…
降り続ける雪の中で、言う。
彼に会わせてくれた神に感謝しながら。
光る指輪を嵌めるまでの思い出を振り返りながら。


「とても、大好きですよ」














久々に更新。




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06.10.04