会えないときは会えただけで嬉しいだろうと思うのに、会えばそれ以上が欲しくなる。






□ 名前を呼んで □






「すず!」


手を掴んで抱き寄せて、抱きしめる。
初めの頃は毎回驚いていたむぎだけれど最近は驚かなくなった。
昔の自分なら、つまらない反応だといじけたりしたのかもしれないが、今ではそんな『抱きしめられ て当たりまえ』の反応が嬉しくてたまらない。
首筋にキスをするとぴくりと反応して怒る。
これも毎回しているの に、これには反応する。


「ちょっ…瀬伊くん!!」


恥ずかしいのか、感じているのか真っ赤になるむぎ。
怒気を含んだ声で言ってもそんな顔じゃ怒っているようには見えない。
そ れに、彼女は逃げようとはしない。
そんなに強く抱きしめていないのだから、簡単に腕から抜け出せるはずなのに。
逃 げないのをわかっていてやっているんだけれどね。


からかうのをやめて腕に力を入れた。
む ぎも腕を瀬伊の腰に回した。
ぴったりとくっついても隙間があってもどかしかった。
だからって服を脱ごうなんて思 わない。
服を脱いだらこんな風に落ち着いてむぎを感じられないし、どんなに服を脱いで抱きしめあっても隙間が完全に埋まることはない のだ。


何分とかではなく、何十分、何百秒もこうしていた。
むぎの心臓 や息遣いを感じて、やっと夢幻でなく、むぎがここにいるのだと実感する。


「会いたかった」


「私 も」


間髪なくむぎは応え、瀬伊から身を離した。
毎回、毎回おんなじ繰 り返しなのでむぎは次もわかっているという顔をしていた。
そこに嫌そうなところはなくて、良かったと思う。
おん なじ繰り返しで、むぎに飽きられるのが怖い。
けれど、やっぱり会うたびにこんな繰り返しをしてしまう。
むぎに 前、この繰り返しを謝ったら、この繰り返しの瞬間は本当に『甘えられている』という感じがして嬉しいと言ってくれた。
普段から甘えて いると言うと、「演技が入っている」と真顔で言うむぎ。
そんなむぎに、すべて見透かされているみたいで嫌だとは思わない今の自分。
昔 の自分が見たら、今の自分はどんな風に映ったのだろう。
色ボケかな。


む ぎが小首をかしげて服の袖をひっぱる。
考え込んでいたようだ。
いつもの繰り返しにこの間はなかったから、困って いるようだ。


そんなむぎもやはり可愛いが、やはりそんな風に困らせるのは本位じゃないので 『いつも』をに戻す。


「名前を呼んで」


む ぎが少しはにかんで、間を置く。
この瞬間にむぎには内緒だけれどいつもどきどきする。


「瀬 伊」


優しく響く、自分の名。
『君』なしで呼んでと初めて言ったときは どもりまくっていたし、少し前までは真っ赤になっていた。
けれど、今は愛しそうに名を呼んでくれる。


「私 も…呼んで」


繰り返しではなく初めて聞いた発言で、むぎのほうを見てみると赤くなってい た。


「むぎ」


名前を呼び捨 てにするのは初めてかもしれない。
むぎも赤かったが自分もきっと赤い。
気恥ずかしさに空気を変ええようといつも のように今日の演奏の感想を聞いた。













365 Themes 1-100/NOVEL





このお題でなかなか文章うまく書けなくて、他のカプでも同じお題で書いちゃった…どうしようかな;




08.09.07