誕生日なんて特に意識しない。
けれど、今年の誕生日は特別だ。
□卒業□
誕生日が3月1日ということで毎回卒業式とかぶる。
卒業式は自分にとって煩わしくもあり、生徒の成長が見れるうれしい時でもある。
まあ、往々にして面倒のほうが勝つのだからあまり卒業式は楽しみでないことが多い。
それと同日である、誕生日もためている仕事の最終締め切りだと思うとあまりうれしくないのだ。
ま、この年になって誕生日がうれしいなんて奴は男でも女でもいないもんだろうとも思う。
けれど、今年はうれしくなる予定がある。
日野だ。
3年生だった日野は今年の3月に卒業する。
こそこそと音楽準備室に現れてはヴァイオリンを弾いていた彼女。
彼女との逢瀬はもちろん手も肩も触れない清いもので、さらに言葉もなにもないままただヴァイオリンを弾く彼女を見守り、ときにアドバイスをする。
色気なんてどこにもない。
逢瀬というよりただの指導だ。
けれど、極たまに彼女の弾く『愛のあいさつ』を聴くたびこれは逢瀬なのだと思わされる。
その演奏に乗せて歌うと彼女も同じように感じているようだ。
もちろん確かめたことはない。
けれど、もうすぐ確かめられるのだ。
卒業式が待ち遠しい。
今更ながら、日野がこんな風に卒業まで自分のことを思ってくれるなんて思ってもみなかった。
だって、日野を好きなやつは五万といたし、普通の恋愛と違って言葉も触れることもデートすら出来なかったのだ。
そりゃ、コンサートに行ったり、遠くへふたりで出かけたこともあったが片手で足りる程度しかない。
やはり、一線を引いて一緒に過ごした。
それで、もし日野が別のやつを選んだら仕方ないとも思ったいた。
だってこの恋愛はフェアじゃない。
俺は普通の恋愛をしたことがあるが、日野はないのだ。
日野は俺しか男を知らない。
でも、俺はたくさんの女性の中から彼女を選んだのだ。
その違いが俺を踏みとどめさせた。
けれど、もう卒業なのだ。
ここまで彼女が幾度となく告白されて、そのたびに断ったのを知っている。
彼女は男の中でも自分を選んでくれた。
想いあってから一年以上経つが彼女の気持ちは変わっていないそうだ。
もう、だから迷ったりしないし、逃がしてやるつもりもない。
教師と生徒じゃなくなったときを考えると少し怖いと言っていた日野も覚悟を決めたようだし。
そういえば、卒業式が誕生日だと言ったとき目を輝かせていたことから考えるに、なにかサプライズが用意されていそうだもある。
誕生日も卒業式もなんて楽しみなんだろうと幾年かぶりに思う。
そうだ、卒業式には髭を剃ってすこししゃんとしてみよう。
彼女はどんな反応を示してくれるだろうか。
というか、卒業祝いを買ってプレゼントするのもいいかもしれない。
そしてなにより告白するのだ。
彼女よりも先に。
365 Themes 1-100/NOVEL
一応、『未来を夢見て』の前フリ話。
かなやん大好きだ。
09.05.27