別れて早、四年。
久しぶりに会うことになった。
何故こんなことになったかと聞かれれば、それはきっと懐かしさだとかちょっとした気まぐれだとかそういうもの。
声が少し低くなっていてそれがなんだか心臓に悪い。
むぎはただ受話器を持ったままうな垂れた。
約束の時間まであと、5時間。






□ 再会 □






クローゼットを豪快に開けてベビーピンクのワンピースとか黒のシックなブラウスとかオフホワイトのスカートとかお気に入りのものばかりを片っ端から出す。
そのなかで一番大人っぽいのはどれか、自分に似合うと思われるものはどれか、非常に悩みながら一つの服を手に取った。
こんなに必死になってお洒落したのはむぎには本当に久しぶりだった。
だって別れた人と会うときにはやっぱり別れて損したと思わせたいから、とか理由を付けて。
いや、実際悔しがって欲しいのも事実だし、子ども扱いされていた自分がどれだけ成長したか知って欲しいと言うのも、自分を見てドキドキして欲しいと思うのもむぎの中では全て、本当の理由。
あまり悩んでいる時間はない。
時計の針は早くも電話が掛かってから1時間も経っていた。


着替えてみるとちょっと物足りない感じがした。
シンプルな服。
そのシンプルなところが気に入って買ったのだからなしょうがない。
しかし、こういうときはとびきりのお洒落をしなくてはと思うのが女。
鏡を見ながら焦る。
こんなんじゃ成長したって思われないかも…ああでもこのシンプルなところが逆に大人っぽさを醸し出すかもしれないし…そう思うとやはり服はこれしかないとむぎは思う。


なら服以外で自分を飾らないとと考えたむぎはそこであるものに気が付く。
髪…。
ヘアスプレーとマジックカールが目に付いてこれだ!とむぎは思う。


あとは、化粧。
鏡の前で念入りに化粧をする。
少しいつもより大人っぽく。
いつもは薄化粧のむぎだが、今回ばかりはしっかりばっちり。
しかし…


「…こんな日に限って化粧ののりが悪いもんだよね」


そういうものだ。
しっかりしすぎてけばいと思われるのもかなり屈辱的なので程ほどにして、最後に口紅を引いて軽くティッシュをかむ。


よし、完璧。
そう、心の中で言い、鞄を手にする、とその鞄がかなり年季が入っていると言うか汚れているのがよくわかった。
…。
どうしよう、とむぎは思う。
この服にはいつもこの鞄だったので他の鞄を持つのもなんとなく躊躇われた。
しかし、時間を見るともう、今出かけないと間に合わない。
しょうがない、とすこし…いやかなり汚れている鞄を手に低めのヒールを履いて電車まで走る。
出そうなところでなんとか乗れて時計を見る。
どうやらなんとか間に合いそうだ。


電車から降りて階段を一気にあがる。
あと3段上れば駅を出るところでたくさんの人の中に遠目から見てもすぐわかる、大好きだった人の背中が見える。
背中を向けているのに何故だか手を振って、久々に呼ぶ名前に少し戸惑いながらも呼ぶと振り返る彼。
久々だからかホームから走ってきたせいか心臓がばくばくいっている。
少し悔しいながらも前よりももっと格好よくなっている気がする。
負けたなんてでも思わない、いや、思いたくない。


さあ、ここからが勝負。
綺麗って思わせてやる!!
絶対に負けないと思いながらむぎは最後の3段を駆け上った。














365 Themes 1-100/NOVEL






誰かぎりぎりわかるように書いたつもりです。




07.04.08