わざと落としてある照明。
ゆらゆら揺れる蝋燭の火。






□ ほおづえついて □






「ふう」


無意識のため息か意識的なため息かはわからぬがもう、計13回。いや、数え始めて13回なのだからもっと多いはずだった。


「何か悩み事ですか?」


考え込んでいる人間に話しかけるのは遠慮しようとしていたジェイドも声をかけた。
さすがにもうため息は飽きたのだ、とそう、顔が言っている。


「いいえ。少し寝不足なだけです」


アニスの答えは予想していたものと一字一句違わず、何だかんだで付き合いが長いんだと心の端で思った。
心を開いて欲しいとか、そんな子供が言う理想、のようなことは言えはしない。
柄ではないし、決してアニスはそんな言葉を必要としていないと知っている。
彼女は子供だが、子供ではない。


「大佐」


ふらりと身を寄せ、上目遣い。
色を持った声に浮かんできそうになる乾いた笑いをかみ殺しながら彼女に笑いかける。
少女は女のように振舞っても子供にかわりはなかった。


「何か?」


アニスは一つため息をついて深呼吸した。
何か迷いを断ち切ったような目がじっとジェイドに注がれた。


「大佐にとって私は子供ですか?それとも大人ですか?」


意外な質問にジェイドは言葉を失った。


「大佐…以外の人、私を大人としてみてるか、子供としてみてるか分かるんです。けれど、大佐は…大佐だけはわからないんです」


真摯な目が答えを待っていた。
その目が、声が、態度が、あまりにも真面目なので冗談で返すこともできず、だからといって答えはすぐにでずにいた。
少女、女、大人、子供。     
全てアニスは持ち合わせている。


「…私は、アニスをアニスとして見ていますよ」


「そうでなくて」「子供扱いして欲しそうなときは子供として、大人扱いしてい欲しそうなときは大人として、見ます」


「そして、全部ひっくるめてアニスをアニスとして見ますよ」


アニス、と子供をあやすようにジェイドは手招きをした。
手招きする大きな手はアニスが席をひとつ詰めると彼女を抱きしめる手に変わった。
抱きしめるとよくわかる。
彼女は子供だと。


「たいさ」


「何ですか?」


「これは大人扱いですか?それとも子供扱いですか」


「まあ、…今回は女性扱いですね」


ほおづえついて泣きそうな女性をなぐさめているとジェイドは言ったらすぐにアニスは言った。


「泣きそうなんかじゃなかったでしょ」


確かにそうだ。
けれど何かに泣いているように見えた。


「大佐」


「まだ、何か?」


アニスは声を落として言った。


「店のひと。見てますよ」


すっと手を離すと笑い押し込めた顔でアニスは先に出ていますよと耳許で囁いた。
店主は不審そうにこちらを見ていた。
お気に入りの店だったが、もう来れないなと密かに思った。







         □■□ 







外で待ってた少女は月を見ていた。
声をかけるとすっとこちらに目をやり笑った。


「変な目でみられてましたね」


「そうですね」


「お気に入りだったんでしょう?いいんですか」


「いいんですよ」


「では、行きますか」


手を差し出すとアニスはそれを何も言わずに握った。
でも、目が言っていた。


「大佐、これは大人扱いですか?子ども扱いですか」














365 Themes 1-100/NOVEL





まったくお題とあってない…




07.03.11